『アシダカグモ』さん、はじめまして…
ある日、家の中で突然兄ボーイがいいました。
「な、なんかいる・・・!」
2019年8月。
これが我が家(東京都大田区)でのはじめての出会いでした。
家の中に奴はいきなり「居た」わけです。
多摩川が近いわけでも、近くに公園があるわけでもないので、ビビりました。なにせ足もあわせて10センチくらいのクモ。
足も太く、第一印象は「でかい」「タランチュラ?」「やばい」「殺せない(でかくてこわい)」。感情が次々と浮かび脳みそがフル回転。
とにかく何か長いもので追い立てて、そのまま玄関開けて退散していただくことができました。
その後、ネットで大慌てで検索。「東京、手のひら大 クモ」
現れた画像には同じものがッ!これだ!
クリックすると写真!クモが嫌いな人は見ないでぇ〜!
アシダカグモ その生態…
アシダカグモ(脚高蜘蛛、学名:Heteropoda venatoria)
見た目
- あみをはらずに夜に壁や天井を這いずり回って(徘徊性)エサを探す。
- 体長メス25−30mm、オス15−20mm
全長(足まで入れた長さ)は約100mm-130mm。徘徊性クモでは日本最大
CD一枚分、大人のてのひらサイズ、つまりでかくてキモい。 - 白、灰、褐色の毛が生えている。
- 人間には基本的に無害だが、見た目が怖い、でかい、キモいと敬遠されがち。
最強のゴキブリキラー
主食はあの忌々しいゴキブリ…!
さらにハエや小さなネズミなど人間にとっての害虫を捕食するため、『益虫』として知られる。
住み着いた家ではゴキブリを全て喰い尽くすまで居座り、食べるゴキブリが居なくなればさっそうと姿を消す(次の戦場へ赴く)ことから、アシダカ軍曹と呼ばれ親しまれることも。
2、3匹いたら半年でゴキブリは壊滅する。
毒はあるけど弱い
毒の成分はプロテアーゼ、ヒアルロニダーゼ、エステラーゼなどの消化酵素が主体。
毒とはいえ、人間に致命的なものではなく、牙も短く人間の皮膚を貫通はしない。
一般的にいえば、クモは体内に毒腺をもち、生き餌の虫を食べるに際して、相手のからだに牙を突き刺し、牙にある細い溝をとおして、消化液と兼用の毒液を注入する。そうして獲物の体内でタンパク質を消化してどろどろの液状に変え、ふたたび牙のストローからスープを吸うようにして食べるのである。
「ものと人間の文化史107 蜘蛛」 斎藤慎一郎著より引用
ホルマジオ「ただの蜘蛛だから…ぜんぜん無害さ…だけど普通のやつだって「咬む」し「毒」も持ってるんだ…。数センチの虫ケラを麻痺させて食うには十分なほどのよォォー」
ナランチャVSホルマジオ (ジョジョの奇妙な冒険51)より
性格はビビリ
非常に優秀かつ獰猛なハンターであるが、自分より大きな動物に対してはめっぽう臆病なので、音をたてると逃げる。昼は隠れている。
人間が素手でちょっかいを出すような場合のみ、咬まれる可能性があるが、基本的にビビっている。
ひと「うぎゃー!こわっめちゃキモ!」
アシダカグモ「!!!!!!!」
弱点は寒さと見た目のキモさ
寒さに弱く野外で越冬できるのは沖縄、奄美地方のみ。北限は福島とされている。つまりゴキブリも居て暖かい人家は最高のすみか。
二度目の邂逅 そのスピード
2019年9月の夜、寝室から悲鳴が。
寝室に向かうと同時に部屋から何か飛び出して来る!
ギャーッ!何?ゴキブリか?
クモーッ!!!!!
うわッ めっちゃ早ッ!!
前回出会った奴より一回り小さめとはいえ、でかくて、そしてなんといってもそのスピード!ほんの一瞬で2メートルくらいを移動。早いッ!あの素早いゴキブリをエサにする力の片鱗をみたぜ…!
そのまま前回同様に「何かそこら辺のもの」で追い立て、うまいこと今回も玄関をあけて帰っていただきました。
二度目ということで、彼が逃げ出すスピードには面食らいましたが、退散していただくことにはちょっと慣れました。
アシダカさんに出会ったら…対策
ゴキブリを全て駆逐すると次なる戦場を求めて勝手に出て行く。巣立ちである。
しかしあのでかくて毛が生えてるのが夜中に家をうろついていると考えると夜も眠れない、という人々も多いでしょう。
- とりあえず追い出す
ほうきでも持って追い立てるしかないです。我が家ではうまいこと玄関から逃げてくれました。
虫取りあみがあれば部屋のどこかに逃げ込まれる前に捕まえることができるかも。 - ゴキブリがいない家にする
ゴキブリがいなければ彼らはやってきませんから…。 - 戦う。
「やってやるぜ…。恨みはねーが、今ここで!てめーを始末させてもらう…!グロテスクなてめーの見た目を呪いなッ!」
我が子を守るために親なら戦うことを選択しなくてはならない時もあります。彼らよりもスピードで上回ることができれば、何か固いもので叩き潰すことができるでしょう。又はゴキジェットをぶっかけるのも多分効果あり。 - ゴキブリホイホイ
に誘われたゴキブリに誘われてホイホイにひっかかる可能性があります。
売れる。マジかっ!
ヤフオクで売ってます。
アシダカグモは人間に慣れると、懐くというか警戒心が薄れるようでペットとして飼う?のか対ゴキブリ用生物兵器として購入するのかはわかりませんが、一体500〜1000円くらいで売ってます。結構買い手もいるようですね。
「淡路県産」とかブランドっぽい感じで1500円とか雄雌セットとかもある…。
朝の蜘蛛は殺すな夜の蜘蛛は殺せ…。
こんなことを親から聞いたことがあります。
夜のクモは殺せって言われても…無理ぃ。
朝のクモは縁起がよく、夜は縁起が悪い、何故なのか。
「ものと人間の文化史107 蜘蛛 」という本で多くの地方で聞き込みした結果がまとめられており、とても面白いです。
朝グモが吉、夜グモが凶だけでなく、地域ごとにいろんなパターンがあります。
その一部分を引用
朝グモは吉、夜グモは凶
「ものと人間の文化史107 蜘蛛」 斎藤慎一郎著より引用
・夜のクモは親に似ていても殺せ。朝のクモは鬼に似ていても殺すな(和歌山県東牟婁郡古座川町)
・夜部屋に現れると不吉。朝は吉。(愛知県豊橋市)
朝グモは凶、夜グモは吉
・夜、家の中に入ってきたクモは「よう来た!よう来た!」といって丁寧にあつかってやるといいことがある(新潟県三条市)
・夜にクモを殺すと親の死に目にあえない(愛知県海部郡甚目寺町・豊橋市)
朝夕を問わずクモを吉とする伝承
・家の中にいるクモを殺してはいけない。クモはコブともいい、ヨロコブを家に、つまり福を家にという意味で(長崎県南松浦郡奈良尾町)
もしも朝グモを殺しちゃった!というアナタ!
こんな感じで地域によって吉凶は逆転してます。
なので夜にクモを殺せなくったってダイジョブだし、朝にクモを殺してしまったってきっとダイジョブ!
古代中国ではクモが吉虫とされ日本にも入ってきたが、「太平記」の土蜘蛛伝承を転機とし、時代を経て「妖怪土蜘蛛」=クモ不吉説が形成されていったのではないかと考察されております。面白いですね。
3度目の出会い そして共存へ…
三度目は10月半ばに訪れました。台風19号でお外の隠れ家が吹っ飛んでしまったと思われ、夜に帰宅した我々と同時に玄関から、一緒に、「帰宅」してしまったご様子。気がついたら玄関内の壁にいました。
三度目ともなると慣れたもので、しかも玄関がすぐということで油断があったということでしょう…。
追い立ててお帰りいただくはずが、ドア脇の3センチほどの隙間に隠れてしまった!
ガサガサやっても出てこない。
手も足もでないッ!
すでにアシダカさんの生態を知ってしまったために殺虫剤で殺すこともできないッ!
とりあえず…。益虫なんだから…。
参考文献&web
- 斎藤慎一郎著 『ものと人間の文化史107 蜘蛛(くも)』 法政大学出版
- 八木沼健夫著 『原色日本蜘蛛類図鑑』 保育社
- 新海栄一著 『日本のクモ 増補改訂版 (ネイチャーガイド)』 文一総合出版
- 荒木飛呂彦著 『ジョジョの奇妙な冒険 51』 集英社
- 千葉市 クモの生態と防除方法
- ニコニコ大百科 アシダカ軍曹